多田統一の”研究所めぐり”

その3 理化学研究所

 私がこの研究所を訪ねたのは、2001年の夏であった。東武東上線の「和光市」駅から、徒歩13分の所にある。正門を入ると、展示事務棟の入り口付近で坂口謹一郎を記念した雪椿の植樹を見ることができた。まず広報室を訪ね、室長さんをはじめ担当の方より概略的な説明を受け、記念史料室や加速器施設などを見学させてもらった。理化学研究所は、日本初の民間研究所として1917年文京区駒込の地に財団法人として創設された。戦後の株式会社時代を経て、特殊法人となり現在地への移転を開始したのは1963年のことである。この研究所は、創立以来多くの著名な科学者を輩出している。理研の三太郎と言われた物理学者・長岡半太郎、磁性物理学者・本多光太郎、農芸化学者・鈴木梅太郎、日本に原子核素粒子の研究を根付かせた物理学者・仁科芳雄ノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹朝永振一郎などである。記念史料室で、貴重な文献を確認することができた。加速器施設では、世界でも最高水準のリングサイクロトロンをこの目で見た。現在、ビッグデータ人工知能分野で活躍するスーパーコンピュータ「富岳」のことがが話題になっている。研究所内の計算科学研究センターが、2021年3月より「富岳」の共用を開始し、社会的・科学的課題の解決に貢献している。ホームページによると、コロナ対策のため施設見学は現在休止している。理化学研究所は、埼玉県和光市広沢2-1にある。交通機関としては、東武東上線の他、東京メトロ有楽町線副都心線を利用することができる。(参考文献:多田統一「研究所めぐり 理化学研究所」文芸広場 Vol.49 No.9、2001年9月)